2013年03月03日
野毛徘徊「旧バラ荘」
桃の花芽がついた枝が幾本も
花屋の店頭に並ぶころ。
春一番の吹いたこの週末の夜。
野毛小路の淡い灯りに誘われて
フラリと日ノ出町の改札を抜けました。
夜風はもう春の湿度と気配を忍ばせて
三月の声を聞いたこの夜
そぞろ歩く酔客たちの足取りが
心持ち軽く見えるのは、
こういう時代にも
春のくる喜びを細(ささ)やかに感じているかのようです。
そんな夜に選んだのはこの「旧バラ荘」。
戦後間もない昭和24年に開店したお店です。
以来、いくつかの変遷を経て
現在のマスターが
その歴史残る「昭和の香り」をそのままに
BARを継承してくれています。
戦後の野毛の闇市の時代も終わり
昭和の昭和たる、
そして横濱という港町の「稀有な香り」を
色濃く残している「野毛界隈」でも
ひときわ目を引くこのお店は
単にレトロだとかノスタルジックだとかの
ひとことでは表すことのできない
心深きところを優しく擽(くすぐ)るような「懐かしさ」に満ちています。
そっとカウンターの椅子に座り
少し春冷えを感じる夜に
メープルシロップをわずかに入れた
「ホットワイン」などを口に含めば、
濱の港に停泊する船たちの霧笛も聞こえてくる。
あの目眩(めくる)めく時代の波に揺られ揺られた
「横濱の夜」がそっと耳元で囁いてくるかのような錯覚に誘われて
ふと、気がつけば「しみじみ」と酔っている
私自身がこの止まり木にいるのです。

かつてサントリーやニッカと並び、
オーシャンは日本の三大ウイスキー会社であり、
トリスバーやオーシャンバーが身近にあった昭和という時代。
あのクライスラーもオーシャンバーですね。

まずはカシスソーダとローゼスのハイボール。
既に酔いは、私を野毛の世界に誘(いざな)いつつあるのです・・。

気さくなマスターのシルエットです。

「ジワリ・・ジワリ・・・」とアルコールが回りつつあるご機嫌なひげ・・・。
まあ、まあまあ、まあ・・・、いいじゃぁないですか。笑

カシスソーダにBARの「琥珀色」が宿り、時間軸は柔らかく記憶に溶けてゆく。

そろそろ昭和との「ほどよい距離」を味わえるこの時代に
私たちはいま、目を向けて、
そこにそれぞれの経験と思いを投影することを「愉しむ人」が増えているのです。

薄暗い空間に寡黙な時間が流れる「至福」。

二杯目はボウモァを・・・。


1962年、セドリックのカタログ。



「帽子と家具のビリジアン」の美しい帽子。
http://www.viridian-shop.com/

三杯目は身と心に沁みる「ホットワイン」。これ最高です。


最寄りの京急日の出町駅ホームを流れる電車。
酔いは程よくほどほどに・・・。笑

気持ちよく酔いが回るほどに
時間は今日という一日の帳を下ろそうとする。
呑み方も、呑む面子もいろいろとあるけれど、
思い返せば基本ひとりの人生。
そのそれぞれの思いを持ち寄り
くゆり残る先客の煙草の香りを
薄く感じながら呑む酒のなんと饒舌な事よ・・・。
野毛「旧バラ荘」は不定休。
営業時間は19時を過ぎた頃~翌2時頃まで。
最寄り駅は京急日ノ出町駅かJR桜木町駅です。
もし、フラリと寄りたいときにはお店への電話をお勧めします。
「旧バラ荘」045-515-7787

Posted by ひげ at 10:14│Comments(0)
│野毛
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