2014年08月10日

「夏の怪談」で心豊かに












お盆のころは終戦の番組などと相まって



日ごろ忘れがちな自分たちの祖先へ、



あらためて心を向けるころでもあります。



このところ先に行ってしまった人たちの気配が



ふとした瞬間に身近に感じます。







そんな夏に読んでみたいのは



宮部みゆきの「お文の影」という文庫です。



この本は「ばんば憑き」というタイトルで



単行本となっていた本を文庫化に際して改題したもので、



宮部みゆきの紡ぐ世界の常でもあります



活字を追い、ページをめくる読者に対して



心に染みる「救い」で閉められている時代小説です。







最近、特に少なくなってしまった「読書後の清涼感」と同時に



じんわりと切なく・寂しい「余韻」が残る本です。



江戸のころの怪異を柔らかく緻密で



それを読み手に感じさせない手腕は流石と言わざるを得ません。



この少しだけ怖く、たっぷりとした温かい心持ちが味わえる本は、



まるでもう亡くなって久しい「おばあちゃん」がそっと語ってくれるような



そんな味わい深い一冊だと私は思います。



「野槌の墓」なんかは読み終わって目が潤んでしまいましたよ。



佐々木蔵之介や市川猿之助・佐藤隆太、



白石加代子の「百物語」シリーズなどで



いろいろな方が「お文の影」や「野槌の墓」・「ばんば憑き」を



朗読公演もされています。








分かりやすいお話であるがゆえの



ネットでの評価はさておき



私の読書感想からは



この夏、とてもお勧めの一冊だと思います。






どうですか、場所を異にしても



ご一緒に夏夜の読書などは・・・。






http://sankei.jp.msn.com/life/news/140705/bks14070512390007-n1.htm


http://books.rakuten.co.jp/rb/12785968/





http://www.osawa-office.co.jp/write/tatiyomi/m_pdf/banbatsuki.pdf#search='%E3%81%8A%E6%96%87%E3%81%AE%E5%BD%B1'






















  


Posted by ひげ at 08:28Comments(0)読書

2014年07月20日

「梅雨の休日、その朝に」








http://www.youtube.com/watch?v=Yb2arWjBhp0








http://www.youtube.com/watch?v=lO79qkKDUNY





「 小さい頃からずっと 友達は少ないほう



だから平気でいられるようになったの・・・ 」




という歌詞ではじまるプリシア・アーンの曲「Fine On The Outside 」。



まるで爽やかな風と自分ひとりの時間を浮遊する



独特の世界をジブリの映画『思い出のマーニー』の主題歌として



囁くように漂うように、ゆっくりと歌い上げています。





『思い出のマーニー』の原作はイギリスの児童文学で



ジブリ映画では北海道が舞台。



休日の朝はゆっくりと目を開けて



枕元の読みかけの本



原作の「思い出のマーニー」を開きます。














そしてもう一冊。



唯川恵の「ヴァニティ」。



この本は女性の機微を的確に



そして前向きに書き上げています。



ぜひ、本屋さんで手にとってみてください、特に女性のかた。



いや、男性のかたも・・・。 



直木賞作家さんであることは別にして



とても心象に響いてくる中・短編集です。









http://www.amazon.co.jp/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3-%E5%85%89%E6%96%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%94%AF%E5%B7%9D-%E6%81%B5/dp/4334767354/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1405812904&sr=1-1

左上のヴァニティ本の「なか見!検索」で少しだけ文章が拾えます。

「なか見!検索」の最終ページに本の簡単な解説があります。






ここひと月で古書七冊以外に新刊・既刊を14冊購入しました。

その中でお勧めの二冊をご紹介しました。







  

Posted by ひげ at 08:39Comments(0)読書梅雨休憩時間

2014年02月12日

『僕とおじいちゃんと魔法の塔』







「僕とおじいちゃんと魔法の塔」






先日、香月日輪さんの


「妖怪アパートの幽雅な日常(この春10巻目刊行)」のことを


このブログで少し触れさせて頂きましたが、


読了した主観を書き留めてみます。


一言で表現すれば「面白く楽しめた」に尽きると思います。


この作家さんの本はそのほかに、


「僕とおじいちゃんと魔法の塔(現在5巻刊行)」や


「完全版 地獄堂霊界通信(現在8巻刊行)」、


「大江戸妖怪かわら版」などなど


今年に入ってから26冊ほど読んでいます。


この作家さんの本はどちらかというと「児童書」に分類される


わかりやすく読みやすいストーリーで、


若い人たちが希望を持ちながら経験を積んでゆく姿が


異界の者とのやり取りを添えて書かれています。


同じタイトルでコミックになっているシリーズもあり、


活字である書籍に対する書評や感想は圧倒的に女性が多く


若い人たちからご年配まで読まれている小説です。




その中で私的には『僕とおじいちゃんと魔法の塔』がお薦めかな・・。


海に面した見晴らしのよい場所に建っている秘密の塔。


その塔は、実は主人公の


今は亡きおじいさんが仲間と建てたものでありました。


いまは閉鎖されている、その秘密基地のような誰もいないはずの塔に


導かれるように入ったことにより


幼い主人公の世界観が大きく変わってゆく・・・。


そんな読む者に対するメッセージ性のある物語です。


犬なんかしゃべっちゃうし、美形も出てくるし・・・。笑




古典や純文学も読み込むと深く楽しいのですが、


それらが執筆された当時の時代と社会的背景が


現代とはかけ離れているために、


読者は、なかなか感情移入し始めるまでに時間が掛かります。





そういう意味では、この作家の本はライノベ系であるし、


自分が通過してきた世代のお話であり、


現代のファンタジーでありますから


最初から肩の力を抜いて入ってゆけると思います。




いずれの作品にも共通しているのが


まず主人公の「まっすぐな気持ち」。


主人公の足りない部分を補う仲間たち。


そして異界のものたち。


とかく混沌とした現在の中で


一筋の光を見出して成長してゆく幼い主人公に読者は導かれて


読者は著者の術中にハマってゆくことが心地よい・・・。




今年に入ってから他の作家さんの本も含めて30冊強を読みましたが、


『僕とおじいちゃんと魔法の塔』は私のお薦めです。




実際に太平洋に面した海辺の岬に


こんな塔を建てて老後を過ごせたら


それは愉しいでしょうねっ。


その時は五階建ての屋上に野天風呂を作ろうっと。


 
 
 



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僕とおじいちゃんと魔法の塔(1) (角川文庫) [文庫]
香月 日輪
ISBN-13: 978-4043943319
価格: ¥ 460

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僕とおじいちゃんと魔法の塔(2) (角川文庫) [文庫]
香月 日輪
ISBN-13: 978-4043943562
価格: ¥ 460

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僕とおじいちゃんと魔法の塔(3) (角川文庫) [文庫]
香月 日輪
ISBN-13: 978-4043943784
価格: ¥ 460

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僕とおじいちゃんと魔法の塔(4) (角川文庫) [文庫]
香月 日輪
ISBN-13: 978-4043944385
価格: ¥ 460

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僕とおじいちゃんと魔法の塔(5) (角川文庫) [文庫]
香月 日輪
ISBN-13: 978-4041001318
価格: ¥ 460

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※「ISBN-13:」の「13」は10桁から移行した最新の13桁コードの意味です。
書店などでの注文の場合のISBNは「ISBN-978-4041001318」などとなります。






  

Posted by ひげ at 21:15Comments(2)読書

2013年12月19日

『優しい気持ちをマ・ナ・ブ・タ・メ』。


















K-TANAKAさんよりご質問を頂きましたので、


これを機会に私自身の頭の中を整理してみます。




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ご質問「本を何処で探すか・・」。


これはあくまでも私の方法なのですが、




1.「解説目録」で探す。------------------------------------------


各出版社では年度毎に自社が出版する「解説目録」を発行しています。
この解説目録は著者別・書名別の索引が必ず付いていて、
各書名にはその本の要旨が簡単にまとめられています。
このアブストラクト(要旨)を読み、共感を覚える作品・作者であれば
心引かれて書店に注文します。
尚、解説目録は書店に常備されていますが、
私は注文量が多いので各出版社の解説目録を書店から貰っております。



2.書籍の投げ込みチラシで探す。----------------------------------

文庫本にはたいてい投げ込みチラシが入っており
そこにその月のお薦めの本が要旨を添えてあります。
これは二つ折りから五つ折りなど様々ですが、
お薦め情報は出版社一押しなので重宝するのです。



3.雑誌の書評・広告などから探す。--------------------------------

男性誌・女性誌などには、数は少ないですが書評欄のようなものがあり、
カバー・表紙の装丁と同時に書名・要旨・書評がまとめられています。
偶々購入した雑誌も本を探す手立てとなります。
また、「ダ・ヴィンチ」など本を紹介する雑誌もあります。
この系統の雑誌は一冊丸々が本の情報です。
当然、間口も広いので気に入った特集などをヒントにします。



4.ネットで探す。------------------------------------------------

アマゾンなどで本を注文する時に最近では必ず、
「この本を注文した人はこんな本も・・・」と、
便乗して本が出てきます。
これ、実はかなり有用な情報です。
同じような読書感の本や、似たような心象を受ける本などが
見つかることが多いのです。
本をネットで注文するときに周りの情報に注意いたします。



5.ネットで「特定の言葉」を使って探す。--------------------------

ネット上で「爽快な読書感 本」など任意のキーワードを使って探します。
大抵、一回の検索では出会いませんから、何度でもしつっこく検索し、
あちらこちらにジャンプしてみます。特にキーワードを複数入れて検索。
これと思う本を見つけたら要旨を確認します。



6.mixなどのコミュニティに入って探す。---------------------------

お気に入りの作家や作品などのコミュに入りますと、
新刊が出た場合、早々に書き込みがあります。
最初に単行本、そして暫くしてから文庫本。
単行本は本としての装丁が良く大きいので飾ることを考えれば単行本。
それに対して文庫本はポケットサイズで価格も安いので
単行本より約一年遅れても安く小さい文庫本もお薦めです。
但し、単行本の後に必ず文庫本が出るとは限りません。
また、文庫本は単行本に加筆・修正されたり、
収録される複数のタイトルが異なる場合もあります。
そして、「第1刷」と「第N刷」のカバーのデザインが
替わることもあります。



7.本屋さんにキープしてもらう。----------------------------------

馴染みの本屋さんに好きな作家の小説を
全て「取り置き」しておいてもらいます。
私の場合たとえば「喜多嶋隆」だとか・・・。
これにより買いもれが防げます。
なぜこの方法を取るかといえば、
作家によりまして刷り部数が少ない作家がいます。
すぐに絶版となってしまうから本屋さんの段階でキープです。



8.知り合いのブログに書かれた情報--------------------------------

ブログは、それを日々書く人の「性格」が現れます。
自分の共感を呼び覚まし、愉しめる人の情報を大切にするのです。
ただ、私のように雑読家の情報は、
皆さんご自分で十二分に吟味してくださいね。



9.本の巻末広告から探す------------------------------------------

文庫本など巻末には同じ作家を含む文庫本の出版社広告があります。
ある程度吟味されている情報で要旨も載っています。
私は必ず読了後、そこに目を通します。



10.書店の地域性を活用する。-------------------------------------

小売の書店は、長年その地域で商売をしていますから、
その土地の歴史などにかかわる少数発行の出版物が並べられて
そのお店の特色をだしていることが多いです。
たとえば私の住む近くの書店では「横浜市の昭和」であるとか、
http://fujihige11.hama1.jp/d2012-03-21.html
南区の70周年を記念した写真集
「写真で見る 南区がたどった70年の軌跡」なども購入しました。
http://www.city.yokohama.lg.jp/minami/kusei70th/70th0107.html
他の場所では手に取ることが出来ないことが多いので
中を確認してから買いたい種類の本はこういう買い方もあります。






http://www.city.yokohama.lg.jp/minami/kusei70th/upimg/syashinntenn-1.pdf


11.謎のデータベースを活用する。---------------------------------

これは、私の勤める会社のDB。
大抵のネットにはその情報を仕事として提供しているので、
皆さんは知らないうちに利用しています。笑
それを利用します。
あえて名前は出しませんが必ずご利用されています。



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ざっとですが、思いつくままに順不同に書いてみました。

上記は全て「書籍」を探すことについての

私成りの手立ての一部分です。

改めて書きとめますと本屋さんの店頭で目に付いて購入・・・

というパターンは私の場合には少ないことがわかります。



本来、本屋さんには全ての書籍があるわけではなく

刊行してから数ヶ月~半年程度で店頭から一度消えます。

これは版元が取次ぎを通して本屋さんに委託販売の形をとっていて

その委託期間で一度清算する制度のためです。

ですから、いつでも購入できるわけではなく

寧ろ「本」は生ものと思った方がわかりやすいかもしれません。



例外として「永遠の0」など刊行から数年かかって売れ出して

版を重ねてベストセラーになるものなどは

書店も売れ筋として常に店頭に長期間並びます。

それも目立つよう本棚ではなく「平積み」することもあります。



私たちが「本」に何かを求めて探すと同時に、

本の方でも私たちに出合うタイミングを待っています。

上記の複数の方法は、その出会いのチャンスを

なるべく多くの機会として捕まえるための知恵だと思います。



尚、本を書店で取り寄せる場合に必要な情報ですが、

書名・著者名・出版社名は最低必要です。

ISBNナンバーを告げればまず間違いは起こりません。

オーダー前に時間を掛けて探し、注文はスマートにが理想です。笑



さて上記は紙媒体ですが、他にネット小説というものがあります。

無料で読めるものもあれば、有料のネット小説もあります。

こちらの情報は機会があればアップさせていただきます。






  

Posted by ひげ at 20:01Comments(2)読書

2013年12月18日

「凪のような穏やかな休日のはじまり」










私には毎年、



年末年始にひとりだけで過ごす数日があります。



それは凪のような穏やかな休日のはじまり、



東京湾越しに太陽が静かに昇りだすと



寝室である和室の障子に



冬の枝や、赤い山茶花がシルエットとなって揺れ映り



部屋の中が少しずつ明るくなってゆく・・。



その光が瞼をそっと刺激して私のまどろみを浅くします。



そしてヌクヌクとした寝床の中でやっと目を覚まし



枕元にある昨晩途中まで読んでいた本を再び開くのです。



そんな冬の休日は



割高感からいままで購入を控えていました単行本の翻訳ものを



何冊か読むつもりなのです。






でも、この単行本たちは重いので、



読みながら二度寝しないように注意が必要です。



でないと、本をモロに顔へ落としてしまいます。



もう幾度、本に襲われたことやら・・・。汗






さて、注文した下記の本たち、


私をそれぞれの世界で愉しませてくれるかなぁ・・・。


いや、年末年始までに待てずに読んでしまいそう・・・。笑




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※以下のアブストは出版社のものから転載です。








■「黙祷の時間」-------------------------------------
ジークフリート・バンヴィル著/松永美穂訳 1680円
ギムナジウムで開かれた追悼式。遺影を見つめる少年の胸に甦る、
美しい教師とのひと夏の思い出。
ドイツ文学の巨匠による大ベストセラー、海に彩られた純愛小説。













■「いちばんここに似合う人」-------------------------
ミランダ・ジュライ著/岸本佐知子訳 1995円
孤独な魂たちが束の間放つ生の花火を、
切なく鮮やかに写し取った16の物語。
カンヌ新人賞受賞の女性映画監督による初短篇集。
フランク・オコナー賞受賞。













■「密会」-------------------------------------------
ウィリアム・トレヴァー著/中野恵津子訳 1995円
早朝のオフィスで、カフェの片隅で、
つかの間の逢瀬を重ねる男女の愛と逡巡を描く表題作など、
英国圏最高の短篇作家による12編。













■「朗読者」-----------------------------------------
ベルンハルト・シュリンク著/松永美穂訳 1890円
彼女はなぜ彼に朗読をせがんだのか。
十五歳の少年と二十一歳年上の女性との切なくて残酷な愛の記録。




上記は全て新潮社です。








こちらは和書ですが、お口直し・・ということで別注文です。


■「香夜」-----------------------------------------
高樹のぶ子 1575円 集英社
月が満ち、香りたつ夜、
流奈が思いを馳せるのは「どうしても会わなければ」と
願う人々との逢瀬。
死への道程を鮮やかに描く長編。



■「思い出のとき修理します」-----------------------------------------
谷瑞穂 630円 集英社
過去には戻れない、
だからこそ「今」を生きることの大切さを教えてくれる1冊。




 
 
 
 
 

 
 
 
  
 

 
 
 
 
 
  

Posted by ひげ at 21:00Comments(2)読書休日

2013年11月14日

『 栄・養・素 』









さてさて、私のブログの更新もだいぶ間が開いてしまいました。


定期点検のビーカブもずっと受け取りに行けなかったし・・。





実は、先週から私を怨む菌が肺奥に入ったらしく


熱を出して先週半ばからバッタリと寝込んでおりました。


日頃、十二分に体調には気を付けてはいるのですが、


一旦体調を崩すと若い頃に比べて治るまで時間が掛かります。


それがイヤなので毎夏は風邪対策として真っ黒な日焼けに努め


ビタミン補給を行ったりして、


その年の冬の風邪を引きにくくするのですが、


( 私の体質上、風邪が引きにくくなります )


今年は夏の海に一度も行けませんでした。


その結果・・・だけではないのでしょうが、


初冬からこの体たらくです。ケホケホ


医者で検査した結果、


なんと私の肺の年齢は八十八歳。Ho、目出度い数字です。笑


再測定でも八十六歳でした。これは笑うしかありまへん。アハハハ







そんなこんなで先日からやっと仕事には復帰しましたが、


まだダルイくてフラフラですし、ずっと声が変なのです。


そう、今の声って志村某の「バカ殿様」と同じ声系なので、


通勤電車の中などで不意にしゃべると


周りの人たちの目が点になります。汗


せめてジャズシンガーの綾戸某さんくらいに言ってよね。


い、いや、トッポジージョ・・・・・。知らないか。笑


すんごくナチュラルに声が裏返ったりシャウトするので、


デビューしたらきっと個性派シンガー間違いなしでしょう。爆


どうやらこの声で寝言を言っているようなのは内緒にしてください。







さて、そんな先日、


妖しいミドルが臥せっていた先週三日間、


若田さんがソユーズで宇宙に上がったり


台風30号がフィリピンを襲ったりしていたのですが、


その数日間だけでも読了した本は、


数えてみますと実に11冊でした。


あと、ネット小説が二本。笑


薄い本でも400頁、厚い本では一千頁近いですから、


平均すると毎日二千頁にとどく位の量を読んでいたのね。


こりぁ、目にも負担がくるわけだ。


毎日がほとんど眠っているか本を読んでいるだけで


過ぎて行きました。


勿論、食事とトイレくらいはありましたが・・・。







ホントは熱のあるときに読書すると


母親からよく「熱が上がるわよ!」と注意されて育ったのですが、


高樹のぶ子の「満水子」の上・下巻などを読み耽っていますと、


ストーリーに引き込まれてもう、止まりません。


半分意識が飛んだ状態で活字が勝手に頭の中を歩き・飛び・刺さります。


力なく本を広げて数ページ読んでは、


気がつくと寝てしまっているのですが、


それを幾度となく繰り返していると


本のストーリーが頭の中で実体験化して行き


まるで当事者的な立場で一喜一憂しているような感覚に浮遊します。


活字が脳にシンクロしているような感じで、


アルコールで酔った感覚とはまたひとつ違って


これ、ちょっと面白い体験でしたね。






高樹のぶ子著の「満水子」は現在、品切れ重版予定なしで手に入らず


ネットで単行本を古本として購入したものです。


本の内容は芸術家としての女性主人公の情念の一側面を


取材する側の男性視点で彼女との短くも長い一年間の付合いとして


色濃くとり上げたフィクションで


そのストーリーの濃度に臥せった私の熱が感応して


とても心象に残る一冊でした。


芸術家系の女性ってこんな感覚の人が実際に多いので


リアル感もありました。







さて、そんな読書。


体調の良いとき、疲れている時、


気分が落ち込んでいるときや


充実した一日を終えようとする時、


或いは十二分に時間の取れた年末年始などなど、


本好きな人は、


それぞれのシーンで「読みたい本」というものを持っています。


今日は寒いからカーディガンをもう一枚・・と、同じように、


その時々のTPOに合わせて咀嚼し易い一冊を持つということは、


ある意味、自身の「足りない栄養素」を摂取するのと似ています。






肉体的に必要な栄養は食べ物・飲み物を口から受け入れるのと同様に、


ご承知のように精神的に必要な心への栄養素というものは


適材適所な本であり音楽であり、


私の場合は横濱の散歩でもあります。


それは、大掛かりな旅行とか


大きな買い物ではなくて、


身近にあるモノ。


たとえばささやかな幸せ感とかもOK。


手を伸ばせば届くところにあるモノこそが、


自分の心への気軽な「サプリメント」になります。


この栄養素は即効性のある薬ではないですから、


絶えず、そして少しずつ摂取することが肝要です。笑


そして、それは気付かぬうちに物心共に病の元を摘んでくれるはず・・。







特に「読書」はある一定の期間・一定の読書量を超えると


目の前が突然開けるように本の世界の愉しみ方が


それこそ理屈ではなく理解できるようになります。


勿論、字を覚えるだけでなく、


考え方にも幅と奥行きが持てるようになる・・・。


すんごい潜在才能のある方は


大きく成長して思考の枝先が開花するでしょうし、


私のような普通の人、それはそれなりに・・・。笑



本日は本屋店主のボヤキを聞きながら手に入れた一冊。


先日、他界しました連城三紀彦の


直木賞受賞作「恋文」を手元へ・・・。
























画像は仕事的にいうとスリップなのですが、
ちょっとエッチィのであえて「短冊」と書いておきます。
画像の書店が取次ぎにだす「注文短冊」、日販注文ものです。
あと、帯は別名「腰巻」とも・・・、・・・。バキッ















http://book.akahoshitakuya.com/b/4101405204



 
 
 
 
 
 
 
  
タグ :読書


Posted by ひげ at 20:31Comments(0)読書

2013年09月10日

「ツナグ」

















このところ、待ち続けていた涼しい風が

朝夕に流れるようになってまいりましたね。



あの、頭の芯まで溶かすような暑さからの開放、

冷えた頭で思考することの出来る「秋」の始まり。

まだ完全には去っていないけれど

今年の夏の残り香のような空気が漂うことはあっても

暴力的な夏はもう私たちの前には居ません。



人は、自分に向かってくるモノよりも、

去ってゆく後姿に抱く感情の方が

穏やかな好意を持ち易いのかな・・。




秋を思わせる人の気配の無い夕暮れに

染まる雲を寡黙に眺めていると

心静まる景色の中で

ここ数年のうちに他界してしまった友人や知り合いのことが

この鎮まった景色のなかに蘇ります。




突然の別れだけでなく

仮に闘病という過程を経たとしても、

残された者は、暫くの時を間に入れないと

その喪失感と真正面から向き合うことは

なかなかできません。


ある程度の時間や、時にはとても永い距離感を得て

やっとそこで「思い返す位置」に立つことができるのではないでしょうか。






さて今回、この拙く妖しい私のブログでご紹介させて頂きますのは、

直木賞作家の辻村深月氏の「ツナグ」という本。

彼女はこの本で吉川英治文学新人賞を受賞しています。



ネットで検索・徘徊してみますと、

この「ツナグ」という本は

レビューとかコメントだけでなく

「感想文」というキーワードと合わせて出てくるケースがとても多い。

それだけ読まれているということなのでしょうか・・。





この作品は、「たった一回だけ他界してしまった任意の人と会える」としたら、

人は誰を選び、そこに何を見出すのだろうか・・・という空想の小説です。

呼び出しを希望する本人も、呼び出される故人も

永遠の中でのたった一回だけの選択・・。



本文中には、それが霊であるとか魂であるとかの

詳しい説明はあえてされておりませんが、

現世の自分自身の希望と同時に

故人の「会いましょう」という承諾とも合致しないと

たった一回だけ、一晩だけの「短い面談」は叶いません。



そしてそんな仮想なシステムの仕組み云々ではなく

むしろ、なぜ会いたいのか、

なぜに会う意味があるのかという

揺れ続ける人の心の視点をトレースするように

四編のストーリーは進行してゆきます。


そしてその橋渡しをする者が「ツナグ(使者)」と呼ばれる者で

それがタイトルになっているのです。



おおよそファンタジーなのはその概念だけで、

琴線に触れる人の心の「柔らかい部分」にひびく

とってもリアルなお話です。

文庫としては少しだけ厚い450ページ弱のこの本。

秋の季節に読む一冊としてお薦めだと思います。



http://www.shinchosha.co.jp/book/138881/

http://www.dokusyokansou.com/pdfgenkou/tunagu.pdf



















  
タグ :ツナグ


Posted by ひげ at 22:53Comments(0)読書

2013年08月25日

「倍返し」


















いま手元に三冊の同一著者の本があります。


いま話題のタイトル「半沢直樹」のシリーズです。


テレビドラマ化されたものを先日観て、


そのテンポの良さと


ビジネスの世界で本人が受ける理不尽なことに対する挑戦が


ある意味、小気味良くて


原作を読みたくなったのです。




バブル終了の頃に架空大手都市銀行に入行した


主人公である半沢直樹が


数々の難関といえるビジネスと人間関係に正面から立ち向かい、


そして、それを乗り越えてゆくというシリーズ・ストーリー。




マスコミは「水戸黄門的」と書くけれど


これは全然立ち位置が違うと思う。


むしろ、下から這い上がってゆく過程において


やってはならない事と


ここまではやって良いという


時と場合により変動する線引きと


内外の圧力や置かれてしまった自身の逆境からの向上を


描いている作品だと思います。




現在、文庫として二冊、


単行本として一冊、


そして第四冊目は


いま、週刊ダイヤモンドに「銀翼のイカルス」というタイトルで


掲載中のこのシリーズ。




実は、一冊目が単行本として出たのは2004年のことです。


得てして、最初はあまり売れ行きが良いとは言えなかった本が


あるときを境にベストセラーとなってゆく・・・。


これは結構、巷に存在するお話かとは思いますが、


「半沢直樹シリーズ」は、公証累計150万部突破という


いまとても読まれている本。


既に、各界では「なぜ売れているのか・・」という分析に


忙しく動いているようです。


http://hon.bunshun.jp/sp/hanzawa





書籍タイトルはテレビドラマの「半沢直樹」ではなく以下です。

①「オレたちバブル入行組

②「オレたち花のバブル組」

③「ロスジェネの逆襲」

④「銀翼のイカルス」(週刊ダイヤモンド掲載中)




















さて、手元にある重松清の「きみ去りしのち」と、


どちらを先に読もうかなぁ・・。


 
 
  
  
タグ :半沢直樹


Posted by ひげ at 11:01Comments(0)読書

2013年07月31日

「陽だまりの彼女」














先日、「陽だまりの彼女」という本を

馴染みの本屋さんで購入しました。



なんでも女性が自分の彼氏に読ませたい本の

第一位の本だそうで、

ちょっと興味を持って頼んでおいた本です。



私は以前から男女間の意識のギャップに興味があって、

いろいろな体験を・・、・・い、いや、

本を乱読しているのですが、

そういう視点を抜きにしても

とても愉しめた本でした。



あまり難しい言い回しは使わずにまとめられているのも好感で、

学生時代以来の十年の空白期間を経て

再び出会った(謎)二人が

肝心なことには触れずに綴る恋愛小説。



その触れられなかった事実が

ある日を境に紐解かれてゆく・・・。

うむっ・・!!

もう、一気に読んでしまいました♪♪



久しぶりに読書後の清涼感と

それと同等の寂寞感を味わうことができました。

こういう読書後の「心持ち」は大好物ですねぇ♪♪ じゅる


読み進むうちに思ったのですが、

この本の底に流れているもの・・・、

市川拓司氏の「恋愛寫真」に相通じるものがあります。



難しいことは良く分かりませんが、

本好きの琴線を擽(くすぐ)ってくる・・・。

何かそんな印象を受けたお気に入りの一冊となりました。



蛇足かもしれませんが、

この小説は同タイトルでこの秋ロードショーとのことです。


http://www.hidamari-movie.com/











  


Posted by ひげ at 20:51Comments(0)読書

2013年07月25日

「読書欲」(Net Planet)について

















私には、いま抱えている問題があります。

それは最近の懐具合の中で遣り繰りしていた本の購入。

買った本を置いておくスペースの問題も大ではありますが、

なにせ半端ではない本の量に財布は痩せる一方で、

数年前から一回に数冊~数十冊という本の購入を

「なんとかしないといかんなぁ」と思い悩んでおりました。



そんな時にフッと、

前述のネットで読める著作権の切れた文学作品を集めました

無料で読める「青空文庫」を思い出しまして

試しに自分の読みたい分野を幾つかのキーワードにして

ネット検索してみました。



そうしましたら「予想以上」に無料で読める小説が出てまいります。

これは、おおよそ書籍化された出版領域では

所謂、ライトノベルと呼ばれる分野なのですが(書誌学的にはヤングアダルト)、

ネットで読めるこの種の小説類は、

プロではなくアマチュアやセミプロの小説好きな人たちが書いている

自由でおおらかな小説の世界なのです。

まあ、少し表現を変えるならば同人誌小説の世界かな・・・。




そしてそれは、完結した小説もあれば現在掲載・執筆中のものもあり、

ネット世界に散在する幾つものグループ「集合体」の中で

それぞれが探し易いように独自に「分類」されています。

横断検索でもっと簡易に見つけられると良いのですが・・・。(汗)



例えば恋愛ものであるとか学園ものであるとか、

もう少し大きなキーワードではファンタジーであるとか

スポーツものであるとか、

壮大なものから、中にはガールズラブとか・・・ハハハ(滝汗)

そんなグループがネット世界では幾つも存在して

さながら地球上における各国のように

微妙にその特徴・カラーを彩り放っているのです。



このお話も私のブログに前述ではあるのですが、

プレビュー数の多い人気のネット小説は

各出版社から声が掛かり書籍化という流れも得られて

めでたくプロデビューする人たちもいて、

いま無料で読めるネット小説は

見えないところで大きな時流を作っているようです。



さて昨年ぐらいから私もこのネット小説関係にハマっているのですが、

ネットで注目されて書籍を出し映画にもなった市川拓司氏のような凄い書き手から、

中には読んでいると申し訳なくも耐えられないようなものまで、

いろいろと同列で散在しているので、

自分の気に入った作家を探したり、

心入れて読める小説にまで行き着くには、

検索の工夫と多大な時間、そして忍耐強い労力が必要とされます。



さてさて、ここで私の膨大なブックマークをすべて、

私のお勧めとして羅列しても良いのですが、

実は「人に小説を薦める」という行為はとても難しいことなのです。

これは経験したことのある人ならば

「そぅそぅ!!」とご賛同頂けるはず・・・。



でも、これだけ引っ張っておいてから、

何もご紹介しないのは申し訳ありませんので、

昨年に読み耽っていたネット小説をひとつだけご紹介させて頂きます。



これは「魔法のiランド」というグループの中から

肩の力を抜いて気軽に読むことが出来る佳篇な一点、

スポーツと友情・愛を柱としたファンタジーな「奇跡は2度降り注ぐ」です。



http://ip.tosp.co.jp/BK/TosBk100.asp?Pid=6059730&BookId=7






そしてもう一冊。

これはネット上ではなく実際に刊行されていた名作といわれている本。

書誌名は「たんぽぽ娘」。

ロバート・F・ヤング著で1962年執筆、伊藤典夫訳です。

これはSFファンタジーの名品と云われていて、

所謂、タイムトラベルものの恋愛短編の秀作です。



あの「ビブリア古書堂の事件手帖3」の第1話にも由来が登場している短編で、

長い間、絶版となっておりましたが、

最近刊行されました「栞子さんの本棚 ビブリア古書堂セレクトブック」の

アンソロジーに収録されています。

この本には坂口安吾の妻の坂口三千代が執筆した

「クラクラ日記」なども抜粋されているので、

気に入った本を探すために読んでみるのも良いでしょう。




短編なのでアブストは割愛させて頂きますがお薦めの一冊です。

尚、「たんぽぽ娘」は今年5月に河出書房新社から、

同6月には復刊ドットコムからも単行本で出版されております。










「たんぽぽ娘」、河出書房新社

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309622071/

























っ!! また今日も衝動買いしてしまった・・・、・・・、・・・。











ぁぁ、読書の時間がもっとほしい・・・。

某くじが当たったら、老後は本を積み上げて家を建てよう・・・。爆

右手に酒、左手に本。

これが本当の本仕込・・・、・・・、・・・。ぁ





  
  
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Posted by ひげ at 21:37Comments(0)読書

2013年07月22日

『聞いてる、ミランダ?』







その本を再び手に入れることができたのは、ほんの小さな巡り合わせでした。




いまから四十年前に少しだけ満たない頃、近所の本屋で購入した本。


私が学生時代の1975年初版の翻訳本で刊行と同時に購入した一冊。


タイトルは「聞いてる、ミランダ?」、講談社で出されていた本です。


現在では版元絶版という、所謂、在庫もないため購入できない本です。




そんなお気に入りの一冊をいつも手元に置いていたはずでしたが、


引越しやらなにやらでいつの間にか無くなってしまい


数年前からネットで探していたのです。




21才で他界した母親をもつ主人公である娘ミランダ。


ティーンエイジャーである彼女が生きることや


父親との葛藤を深く抱えていた時に、


母親が娘に生前残しておいたテープを父親から渡され、


幼少のころに聞いた懐かしい母親の声をカセットに入れて


自宅から遠く離れた場所でひとり、


自分に宛てた「生きたメッセージ」を聞き取りながら旅をするストーリーです。


その家出ともいえる旅の中で、自分を見つめ、


やがて父親への誤解を解き、


今は無き家族たちへの理解も得てゆくという物語です。




今の自分とたいして歳の違わない母親が、言葉を選びながら


いま自分に語り掛けてくる・・・、


その懐かしい声に心を揺らしながら聞くテープは全部で四本。


少しずつ弱っていく母親の声。残り少なくなってゆくテープ。


そして明らかにされた衝撃の真実。


テープの声に励まされながら、一言も聞き漏らすまいと聞き入る19歳の娘。


その先にはいったいどんな展開が・・・・。





そんな物語をまた読み直したくなり、ネットでも探していたのですが、


見つかるときは見つかるもので、青森の古書店に一冊。


もう一冊はオークションに出されていました。




早速、手に入れた懐かしい装丁は、いかにも昔風のあの時代の作りです。笑


ほぼ間違いなく覚えていた文章もあれば、


あれほど読んだにもかかわらず、まるっきり覚えていなかったところもあり、


深夜に少しずつ読み進めております。




さて、私にはそういう本が近年に数冊あり、


便利なネットで時折探し歩いています。


たとえば、もう一冊は旧ソビエトの作家


ペトローヴィチ・バジョーフの著した「石の花」。


これは児童書として別名「孔雀石の小箱」というタイトルでもあるようです。


手に入るといいなぁ・・・。




こういう過去への探求と時間を忘れたお遊びは、


誰にでも持ち合わせている事柄でしょうし、


自分だけの特別に大切な愉しみでもあると思います。





今度また、あの某BARの「S字カウンター」で一人私がニヤニヤしていましたら、


是非、わたしに話し掛けてみてください。


「また何かお気に入りの本が見つかったのでしょ!」と・・・。






 
 




 
 















 
 
 
  
 
 

 
 
 
 
  


Posted by ひげ at 20:32Comments(0)読書

2011年09月10日

『別れ』について。




 『別れ』について。   




季節は早くも九月に入り

夏色の肌を持つ人も

だいぶ少なくなりつつある今日この頃。


昨年ほどの猛暑ではない今年の夏も

少しずつ、少しずつ涼しい日が

やってくるようになりました。




さて、今日は「別れ」について・・。

このところ読み耽っている中から

テーマを揃えて「本」のご紹介です。



誰ですか、別のことを考えた人は??










さてまずはこの一冊

市川拓司氏の『VOICE』。

TBS系で放送されました「いま、会いにゆきます」の

著者でもあり数々の美しい作品を執筆している中で、

この「VOICE」は、

当初、ネットにアップしていて絶賛され

書籍化された本だと聞きます。


誰でもが一度は経験するであろう青春恋愛の「姿」を

独自の美しい筆づかいで書かれたこの作品。

彼の今は亡き母も一番好きだったというこのお話は、

掛け違ってしまった柔らかなカーディガンのボタンのように

読む人をワンシーンごとの戸惑いともどかしさ

そして耐え切れない喪失感にも誘う・・、

とても淡く繊細で美しい一冊です。


もし、最後まで一気に読むことができたら

この本の良さは味わえない・・。

きっと途中で何度も読書を中断することになるでしょう。

言い換えればそれほど、

心の深い部分、

その「儚さ」が綴られております。



















http://fujihige.dyndns.org/2011NEW/20110910_04a.jpg













二冊目は、『スワンソング』

大崎善生氏の作品です。



恋愛の当事者にとって或る意味

「別れ」と「喪失感」は同義語であるように

その「=」の中に封印された多彩な心の色味は

おそらくは誰にも正確には理解できない。

なのに著者の筆に掛かると強く伝わってくる共感がある・・。



自分だけではどうしようもない狂おしさを握り締めながら、

「素直に生きる」のは如何に難しいことであるのかということを

小説を通して読み取ることができる儚く哀しい一冊です。




















最後にご紹介するのは、

喜多嶋隆氏の『水恋』です。


舞台はお決まりの湘南。

おそらくは「秋谷」辺り。


細い糸を手繰るように

精一杯手元まで慎重に抱き寄せた思い。

でも消えてゆく姿。


主人公はすべき事を尽くし、

その「過程」に自分の心を昇華する・・。

そんな透明感溢れる

凪の浜辺に打ち寄せる静かな波のような

読書後の心を大切にできる一冊です。

















この三冊には、

激しくほとばしる熱き言葉は文中にありません。

しかし、その心の底に流れる「儚くも強い思い」が

絶えることなくあります。



いま、大きく替わってゆくこの季節。

往く夏に名残を感じつつも、

涼しく新しい季節を感じながら読むに足る本たちだと思います。











  


Posted by ひげ at 09:46Comments(0)読書

2011年08月27日

「よい匂いのする一夜」







「よい匂いのする一夜」


いわゆる大家である池波正太郎氏の

大切に見つめていた「おもてなし」の心。

いまの社会で失われつつある人と人との気遣いを

伝統を受け継ぎながら守り続ける宿や

気持ちのこもる食事を通してまとめた随筆集です。

心は形にしなければ他の人には見えない、

しかし表に出る形の裏には、

何倍もの「見えない根っこ」があることを

旅先での体験を通して教えてくれる一冊だと思います。
















「もう少しむこうの空の下へ」


旅を愛し、旅を書き留める作家である椎名誠氏の

多数ある前向きな著書群とは一線を引いた

旅での出会いや心に浮かんだ思いを、

「心象深く」掘り下げた物語。

旅空の下から椎名氏が

静かに読む人に語りかけてきます。
















もう一冊は「アメンボ号の冒険」

頁の少ない小品ですが、

文中には子供時代の椎名氏の思い出が

たくさん詰まっている本です。

下記の「霧の・・・」とあわせて紹介させて頂きます。
















「別れの後の静かな午後」

男性の視点から男と女の心のふれあいを

美しい文章で綴る大崎善生氏の短編集。

切なく静かに奏でられる大崎文学の世界は

読書後に読んだ人の「思い」をそっと共振させてくれます。
















「She Is Wind」


湘南の葉山に住み、

葉山界隈をその小説の舞台にすることの多い喜多嶋隆氏。

葉山好きの方達にはたまらない作家ですが、

この作品は第二次世界大戦後の混乱期にヨコハマを舞台に

繰り広げられた物語です。

ジブリ映画に出てくる真っ直ぐな女性が好きな人には

お薦めの一冊だと思います。
















「霧のむこうのふしぎな町」


小さな子から大人まで、

「やわらかな心」を持った人に優しく

囁いてくれるこの本は、

「千と千尋の神隠し」にも影響を与えた

とびっきりのファンタジーです。

人はゆっくりと成長するもの・・。

特にまだ小さな子供たちに読んで聞かせたい本です。

作者は柏葉幸子氏、

このファンタジーの初版は1975年です。




















ひげは上記の作者全てのコミュニティに入っています。

本を人に薦めるのはたいへん難しいのですが、

ひげというひとつのフィルターを通して

その内容と根底に流れている「味わい」を推察してもらえれば

良いかと思い雑読する中から共感を得た数冊をアップしました。









  


Posted by ひげ at 15:45Comments(0)読書

2009年05月19日

『語るに足る、ささやかな人生』




待つこと二週間。

馴染みの書店に頼んでいた本がやっと手元に来ました。

2007年の初刷りの文庫カバーの装丁写真も、

とても味わいのあるカットで、

アメリカのスモールタウンの「空気感」を伝えてくれるかのようです。

さて、本の書評はプロの方にお任せするとしまして、

「やはり・・」と、共感できることの多い

実存するアメリカの小さな町のお話。

男性である筆者の視点をからめたその「物語」は、

ある意味で、いまの社会において、

人としての本来の素朴な立ち位置を教えてくれるかのようです。











『語るに足る、ささやかな人生』

小学館文庫
駒沢 敏器 著
317p,15cm,A6判
ISBN:9784094081947
価格:¥590 (税込)



http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4094081941.html

http://bookjapan.jp/search/review/200811/001/03/review.html
  

Posted by ひげ at 23:20Comments(0)読書

2009年05月04日

活字の旅



五月の休み明けから六月まで、

仕事が多忙となるのは毎年のこと。

単純計算でも仕事である出版点数は倍となるので

毎年この時期の前に

精神的栄養の「まとめ読み」を行っております。


画像はこのひと月ほどの読書の一部分、

タイトルに引かれて手に取った本もあれば

作家の筆圧に購入を決めたものもあります。


心穏やかにさせてくれるストーリーや

ある意味辛い思いを呼び覚ましてくれるドラマもあり、

一日の内で幾つかの限られた時間では

仕事中にその続きが読みたくて後を引いたり

深夜の眠りへの障壁となってしまう。

そんな素晴らしい書籍たちは、

ただ、頁をめくるだけでそれぞれの作家の世界に深く誘ってくれます。




おっといけない。

上着のポケットにあと二冊あったのを忘れていました。








http://fujihige.dyndns.org/2009NEW/200905BOOK_001.jpg

白石 一文(しらいし かずふみ)1958年

「もしも、私があなただったら」(光文社文庫)
「僕のなかの壊れていない部分」(光文社文庫)
「見えないドアと鶴の空」(光文社文庫)
「不自由な心」(角川文庫)
「すぐそばの彼方」(角川文庫)
「私という運命について」(角川文庫)
「一瞬の光」(角川文庫)

※社会の中で、誰にでもある過去。
現代を揺らぎながら生きることと失うことを書き綴る作品の数々。











絲山秋子(いとやま あきこ)1966年
http://www.akiko-itoyama.com/

「海の仙人」(新潮文庫)
「イッツ・オンリー・トーク」 (文春文庫)
「スモールトーク」(角川文庫)
「逃亡くそたわけ」(講談社文庫)
「ニート」(角川文庫)
「袋小路の男」(講談社文庫)

※「海の仙人」で初めてこの作家を読みました。
ある青春を書き綴ったこの「海の仙人」の透明度が好きです。
特定のクルマを小物として登場させる手法は筆者の車歴から・・。



宮部 みゆき(みやべ みゆき)1960年
http://www.osawa-office.co.jp/write/miyabe.html

「堪忍箱」(新潮文庫)
「あかんべい(上・下)」(新潮文庫)
「淋しい狩人」(新潮文庫)

※現代小説と時代小説を書き分けるこの作家。
その根底には共感できる静かに哀しい旋律がいつも流れている。









http://fujihige.dyndns.org/2009NEW/200905BOOK_003.jpg

城山 三郎(しろやま さぶろう)1927-2007年
「無所属の時間で生きる」(新潮文庫)
※一昨年に他界した筆者のこの随筆には「この日、この空、この私」が
社会の中で自分の基準を持ちどう生きたかをさりげない言葉で綴られています。



宮本 輝(みやもと てる)1947年
http://www.terumiyamoto.com/
「私たちが好きだったこと」(新潮文庫)
※生きるということ、愛するということ、許すということを
単なる利他主義や互恵的利他主義に片寄ることなく
しっかりと生きていこうとする噛めば噛むほど意味深い作品。



岡田 信子(おかだ のぶこ)
「たった一人の老い支度 実践篇」(新潮文庫)


阿川 佐和子(あがわ さわこ)1953年
「サワコの和」(幻冬舎文庫)


荻原 浩(おぎわら ひろし)1956年
「押入れのちよ」(新潮文庫)


横山 秀夫(よこやま ひでお)1957年
「臨場」(光文社文庫)
「深追い」(実業之日本社)


佐伯泰英(さえき やすひで)1942年
「居眠り磐音 江戸双紙 29 冬桜ノ雀」(双葉文庫)
※1~28は熟読済み




  


Posted by ひげ at 22:37Comments(2)読書

2009年03月25日

春の夜の嗜み





今朝桜の開花を通勤電車の中から確認しましたが、

今日は寒の戻り日でした。



この季節は別れと出会いの季節。

先ほど帰宅後「いきものがかり」の「YELL」をテレビで聞きました。

まだリリースされていないようですが、

心の深い部分に響くものがありました。

http://www.nhk.or.jp/ncon/music_program/kadaikyoku_j.html

http://www.youtube.com/watch?v=abIbO5C4BrU

http://www.youtube.com/watch?v=5-6pD1-wvoE





このところの読書としての近況報告でございます。

http://fujihige.dyndns.org/2009NEW/20090325_001.jpg







「あなたと、どこかへ。」の八人の作家による短編アンソロジー。

特に片岡義男の「遠い雷、赤い靴」は素晴らしい。

昔に読み耽った一連の作品を彷彿しました。嗚呼

この本のテーマは「ドライブ」。

恋人と、妻と、兄弟や家族、あるいはひとりで・・。

クルマはあくまでも主人公の人生の一部であって、

全てでないところがまた良い距離感です。

http://www.amazon.co.jp/gp/reader/4167717824/ref=sib_dp_pt#reader-link



次に上記アンソロジーにも執筆している川上弘美の「なんとなくの日々」。

こちらもとても好きです。

読み進むほどに肩の力は抜けてゆき、

彼女独特の穏やかに少し視点を低く置いた筆遣いに

いつのまにか心が解れてまいります。

http://www.shinchosha.co.jp/book/129238/




もう一冊の「漢字音符字典」。

これは学生時代から無意識に避けていた「漢字」と

正面から向き合うための沢山の中の一冊。

こういう事にこそ、余裕と時間をもって向かい合いたいものです。

http://www.amazon.co.jp/%E6%BC%A2%E5%AD%97%E9%9F%B3%E7%AC%A6%E5%AD%97%E5%85%B8%E2%80%95%E5%9F%8B%E3%82%82%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%E6%BC%A2%E5%AD%97%E3%81%AE%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%8A%E7%99%BA%E8%A6%8B-%E5%B1%B1%E6%9C%AC-%E5%BA%B7%E5%96%AC/dp/product-description/4990336011
  


Posted by ひげ at 21:30Comments(0)読書

2008年08月16日

お勧めの一冊。




本日ご紹介したいのは横濱の出てくる本ではありません。

ある女性から勧められて予約してまで手に入れたこの一冊。


大崎善生著 『九月の四分の一』

この四つの短篇、いずれも好きです。


                         ・報われざるエリシオのために
                         ・ケンジントンに捧げる花束
                         ・悲しくて翼もなくて
                         ・九月の四分の一









表四の紹介を抜粋させていただきますと

「出会いと別れ、喪失と再生。追憶の彼方に今も輝くあの頃、そして君。

深い余韻が残る四つの青春恋愛短編。」とあります。


ひげも通勤電車の中で、昼休みに会社のデスクで、

深夜に寝床で・・・と、

もうすぐ二桁にとどくほど読み返しました。

読書後の余韻と清涼感は最近読んだ本のなかで五指に含まれます。

男性の一人称の視点で描かれているこの一冊は、

是非みなさまにもご紹介したい一冊です。


そして、この本と対をなす女性の一人称で書かれたもう一冊

『ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶』には、

リリカルに二冊を繋ぐ「意図と糸」が封印されております。




大崎善生氏はひげと同年代の作家で、

2002年に「パイロットフィッシュ」で

吉川英治文学新人賞を受けております。

なお、『九月の四分の一』は結局二冊を購入して、

一冊は後輩に読んでもらっております。


この本を教えてくれましたKさんに改めて心から感謝をさせていただきます。


 

  
タグ :読書余韻


Posted by ひげ at 11:20Comments(2)読書